単価を上げるのか、数を増やすのか
これは、経営や事業戦略の根幹 に関わる選択肢で、利益成長をどう実現するかというテーマに直結します。
のれんや減損の話ともつながっていて、M&A後のシナジーを実現する際も「単価を上げるのか、それとも数を増やすのか」という問いを避けて通れません。
1. 単価を上げる(価格戦略)
メリット
- 数を増やさずとも売上を伸ばせる
- プレミアム感やブランド力を強化できる
- 高付加価値モデルなら利益率が改善しやすい
デメリット/リスク
- 顧客が離れるリスクがある(価格弾力性を超えると需要が急減)
- 競合との比較で「高いだけ」と映る場合はブランド毀損に直結
- 短期的な収益改善でも、長期的に市場を狭めてしまう可能性
適するケース
- 差別化が明確で「他では買えない」要素を持っている
- 富裕層やニッチ市場で価格弾力性が低い
- 顧客が「価格より体験や安心を重視」している
2. 数を増やす(販売量戦略)
メリット
- 規模の経済が働き、1単位あたりコストが下がる
- 市場シェアを伸ばし、競合に対して優位を築ける
- 売上の安定性が高まる(顧客基盤が広い)
デメリット/リスク
- 薄利多売になり、利益率が悪化する可能性
- 生産や物流の負荷が増し、オペレーションの難度が上がる
- 数を追い続けることで「疲弊型成長」になりがち
適するケース
- 市場規模が大きく、拡大余地がある
- コスト効率や供給力に強みがある
- 価格競争に耐えられる財務体力や供給網を持つ
3. 実務的には「両輪」で考える
実際の経営は「単価 or 数」ではなく、両者の組み合わせです。
- 短期:既存顧客の単価を上げて利益を確保する
- 中長期:新規顧客や販売チャネルを広げて数を増やす
この二段構えで進める企業が多いです。
さらに、近年は「WEI(Well-being & Empowerment Index)」のように顧客体験の質や顧客の主体性を指標に入れることで、「単価を上げても納得される関係性」を築く企業が増えています。
4. のれん・減損との関係
買収で計上したのれんの価値を守るためには、
- 単価を上げて利益率を改善するのか
- 販売数を増やしてスケールを実現するのか
どちらか、あるいは両方のシナリオを実現する必要があります。
もしどちらも実現できなければ、将来キャッシュフローが想定を下回り、のれんの減損リスクにつながります。
🔹 まとめると
- 単価アップ=「ブランドや独自性で勝負」
- 数アップ=「規模と効率で勝負」
- どちらも環境や戦略によって併用し、バランスを見極めることが肝心です。