S-WB(Social Well-being)完全ガイド
副題: 生活者の体感価値で測る社会アウトカム
対象読者: 自治体政策担当、研究者、NPO/企業の社会評価担当、データアナリスト
この記事でわかること: S-WBの定義、測定指標セット、データ運用、算定・可視化、実装手順
TL;DR: S-WBは“制度の設計”ではなく“暮らしの結果”。主観×客観を統合し、交通・安全・孤立・環境など非貨幣的制約も含めて評価する。
1. 定義
S-WB(Social Well-being)は、社会の暮らしの結果(アウトカム)を表す合成指標群。健康・学び・仕事・安全・移動・環境・人間関係など生活者の体感価値に直結する領域を扱う。政策の入力(制度・予算)ではなく、結果の質に焦点を当てる。
2. なぜ重要か(よくある誤解)
- 誤: 所得が上がればS-WBも自動で上がる。→ 正: 孤立・移動制約・安全・住環境など非貨幣的要因がボトルネックになる場合が多い。
- 誤: 主観データは信用できない。→ 正: 政策の“体感価値”は主観でしか測れない。主観×客観の統合が鍵。
3. コア指標セット(例・初期案 12〜15)
- 健康寿命/生活機能の自立度
- 主観的健康・生活満足度
- 教育到達(高校・専修・大学)/学び直し率
- 就業の質(失業率↓、不本意非正規↓、賃金中央値↑)
- 住宅の質(過密↓、家賃負担率↓、設備水準↑)
- 犯罪発生率↓・交通安全度↑
- 災害安全(ハザード×備え×復旧力)
- 生活交通・移動自由度(到達性/バリアフリー)
- 環境満足(騒音・空気・緑地アクセス)
- 社会的孤立率↓・孤独感↓・相談先到達性↑
- 相互扶助/ボランティア参加率↑・コミュニティ参加多様性↑
- 文化・余暇アクセス(図書館/公園/文化施設の利用)
負側指標(例: 失業率、犯罪率)は符号反転して合成します。
4. データ運用
- 更新頻度: 年次中心+可能な領域は半期/四半期速報
- ソース: 行政統計、自治体オープンデータ、市民サーベイ、交通/防災/環境ログ
- 品質管理: 欠測補完、サンプル偏り補正、定義変更の注記
5. 算定方法(標準)
- 中央値/MADで標準化(外れ値に頑健)
score = 2 * tanh(z/2)
で [-2, +2] に圧縮- 等重み平均(初期)→ 将来は因果重要度や費用対効果に基づき重み学習
6. 可視化
- レーダー:S-WB内の領域プロファイル
- 地図:小地域別ホット/コールドスポット
- 関係図:孤立と移動・文化アクセスなどの連関
7. 実装チェックリスト
- 主観×客観の混合
- 反転処理・正規化の一貫性
- 欠測の扱いと小地域の推定
- 時系列断層(定義・調査法変更)の明記
8. FAQ
Q. 指標は何項目が理想? A. 12〜15項目を推奨(過多は運用負荷、過少は歪み)。
Q. 国際比較は? A. 定義差が大きい領域は相対化(z化)で扱い、注記を添える。